コラム COLUMN
麻酔の効き目
こんにちは、院長の馬場です。
麻酔が効く過程についての話
麻酔の注射というのは、歯に痛みを伝える神経に直接麻酔しているわけではないのです。歯茎に注射された麻酔薬は、まず、歯槽骨と呼ばれる骨に浸透していきます。その後、歯の根っこに到達し、よこでようやく歯の神経に麻酔が効き始めます。ですから、ここまでの過程で何か障害があると、麻酔が効きにくくなるという現象が起こります。
こんなケースは麻酔が効きにくい
骨に厚みがあったり、骨密度が高かったりすると、麻酔薬が浸透しにくくなります。下の顎の奥歯などは、とても分厚い骨に覆われているため、もともと麻酔が効きにくい状態にあります。
また、歯や歯茎に強い痛み(強い炎症)がある場合や膿が溜まっているような状態でも、麻酔の効果が炎症によってかき消され、麻酔効果が悪くなります。
あと、麻酔液の種類と患者さんの体質の相性もあります。麻酔液の種類によって効きやすかったり、効きにくかったりする場合もあります。
このように、麻酔薬というのは、誰でも同じように作用するものではありません。その人の体質や体の部分、体調によっても作用の仕方が異なるのです。
- 強い炎症や痛みがある場合
- 下顎の場合
- 緊張している場合
- 体調不良の場合
- 飲酒の習慣や内服薬を常用している場合
原因1【強い炎症や痛みがある場合】
強い炎症や痛みがある歯に麻酔をする場合、歯の周辺組織のpHが酸性に傾くため、麻酔が効きにくいことも。
歯医者で行う浸潤麻酔が作用するときに影響を与えるのが、治療する歯の周辺組織のpH。
麻酔薬は、pHが酸性に傾くと効きにくくなる性質を持っています。
炎症が起きている歯や、虫歯で痛みがある歯は周辺組織が酸性に傾いています。
麻酔薬の性質から、炎症や痛みがあると麻酔が効きにくいのです。
例えば、抜歯予定の歯の周りの歯茎に強い腫れがあった場合、その日に抜歯できないケースが多いです。
対処法としては、抗生物質などを処方し腫れが落ち着いてから後日抜歯を行います。
虫歯が進行し痛みが強いときも同様に、内服薬の服用で症状が落ち着いてから、後日改めて神経を取るなどの治療を進めます。
原因2【下顎の場合】
下顎は上顎と比較すると、骨の密度が高く麻酔薬が歯まで浸透しにくいため、麻酔が効きにくくなります。
下の歯の中でも特に麻酔が効きにくいのは奥歯。大変なのです。。。親知らずは特に。
口腔内でも、1番硬く分厚い骨に覆われているのが特徴です。
「下顎の親知らずを抜歯するときに麻酔が効きにくかった」というのは比較的起こりうることですが、1番麻酔の効きにくい場所であるためですね。
ですので、麻酔しようとしている歯に炎症や痛みが強く、かつ下の奥歯である場合は麻酔がなかなか効きにくいと言えるでしょう。
できるだけ炎症や痛みが強くなる前に治療を受けることをおすすめします。
原因3【緊張している場合】
歯医者での治療に不安があり、緊張している場合は麻酔が効きにくいことがあります。
例えば以前治療で痛い思いをしたり、トラウマがあったりする方もいますよね。
そういった過去の経験やトラウマから、治療に対して不安が強くなると、痛みを敏感に感じてしまいます。
意識するほど痛みに敏感になるため、麻酔前に深呼吸したり、できるだけリラックスするようにしましょう。
歯科医師や歯科衛生士に、治療に対する不安やトラウマを予め話しておくと、できる範囲で配慮してくれることもあります。
原因4【体調不良の場合】
体調不良や睡眠不足などの場合、麻酔が効きにくかったり、普段感じないような違和感を感じることがあります。
無理して麻酔を受け治療すると、思いがけない症状が出ることも。
麻酔が効きにくく麻酔量が増えたり、麻酔後気分が悪くなることもあるので注意しましょう。
体調が悪い場合は無理せず、体調を整えてから治療を受けることがおすすめです。
原因5【飲酒の習慣や内服薬がある場合】
普段から飲酒量が多かったり、抗うつ薬や鎮痛剤を常用している場合も、麻酔が効きにくくなります。
麻酔薬をはじめとした体に取り込まれた化学物質は、肝臓で分泌される酵素の働きにより分解されます。
お酒に含まれるアルコールや注射、内服薬に含まれる成分も、肝臓で分解されている化学物質です。
普段から飲酒量が多かったり、抗うつ薬や向精神薬、鎮痛剤を長期間服用していると化学物質を分解する酵素が増え、分解速度は速くなります。麻酔薬が速く分解されるため、効きにくくなってしまうのです。
抗うつ薬や鎮痛剤に限らず、常用している内服薬がある場合は、お薬手帳を常備して受診しましょう。
以前、麻酔が効きにくかった経過がある人、麻酔でアレルギー反応が出た経験がある人は、治療前に歯科医師にお話しておきましょう。
本八幡駅から徒歩1分の歯医者 本八幡TaCファミリー歯科では3段階の麻酔をこころがけています。
著者紹介
馬場 達也(ばば たつや)
「もし自分が患者様の立場だったら......」
私は診療中に、何度もこの言葉を自分自身に問いかけています。自分が目の前の患者様なら、どんな治療を受けたいだろうか。こんな説明で納得できるだろうか。
このような自問自答を繰り返しながら、丁寧な治療やわかりやすい説明を心がけてきました。
とくに患者様の痛みにはしっかり寄り添いたいと考え、可能な限り治療の痛みを軽減するためにあらゆる工夫をしています。
また、治療前後の画像をお見せして共に回復を喜び合ったり、疑問があればすぐにお答えしたりと、患者様との人間同士の関係を大切にしてきました。
もちろん患者様に信頼していただくため、治療技術を高めるための努力も惜しみません。
『一時的』ではなく『一生涯』の担当医として、皆様に寄り添えたらという思いで日々診療にあたっています。【本八幡TaCファミリー歯科】をどうぞよろしくお願いいたします。
- 経歴
- ・昭和大学歯学部 卒業
・日本歯科大学附属病院 研修
・町田駅前グレイス歯科矯正歯科 勤務
・けやき歯科 勤務
・本八幡TaCファミリー歯科 開院 - 所属
- ・歯科医師
・ファイナンシャルプランナー 2級
・介護支援専門員(ケアマネージャー)
・日本口腔インプラント学会 所属
・インビザライン(マウスピース)矯正認定医 - サーティフィケイト
- ・総合インプラント研修センター100時間コース受講